7. ブルームーンストーンとその類似石

最近、ブルームーンストーンに関するお問い合わせが多いので、こちらで少しブルームーンストーンやその類似石について取り上げたいと思います。

本来、ブルームーンストーンとは、その名の通りブルーのシラー(シーン)が出るムーンストーンを指しますが、日本では類似石のラブラドライトやペリステライトも"ブルームーンストーン"として販売されています。
ラブラドライトやペリステライトも非常に美しく、また素晴らしい石ですが、これらを"ブルームーンストーン"として販売するのは、お客様への説明義務(ブルーのシラーが出る"ムーンストーン"はありますか?、というご質問が最近多いです)は当然として、鉱物の分類学上からもやはり少し問題があると思います。少し専門的なお話になりますので、こちらのコラム内では詳しく書きませんが、中央宝石研究所に、参考となる資料がございましたので、興味のある方は、こちらを読んでみてください。

日本で、類似石がブルームーンストーンとして売られているのは、おそらくはそれと知らずに仕入れている、そもそも違う種類の石であるという認識を持っていないため、という理由からだと思われます。他国産のラブラドライトやペリステライトは、スリランカ産のブルームーンストーンに比べると価格が安いので、これらを"ブルームーンストーン"として販売すると利益が出る、という面もごく一部ではあるかもしれませんが、主な理由は、「知らずに」「全く意識せずに」というものでしょう。
これら三種類の石は、肉眼での判別が付きづらく、特にブルームーンストーンとペリステライトは、慣れていなければまず分かりません。インクルージョンや屈折率、比重などでの判別は可能ですが(後日、機会がございましたら、これらそれぞれの石の特徴や、見分け方についてご紹介したいと思います)、日本で仕入れを行った場合に、おそらくそこまでチェックはされないと思われますし、また判別出来る方も少ないことでしょう。ペリステライトは、比較的最近市場に出てきた石ですので、仕入れる方がその存在を知らないという可能性もあります。

加えて、ブルームーンストーンの産地の代表とも言えるスリランカですら、最近では、インド産やマダガスカル産と思われるラブラドライトや、タンザニア産のペリステライトが大量に出回っています。単純に、スリランカで直接仕入れたから、このブルーが出る石はムーンストーン、とは言い切れないのです。
下の左の写真は、スリランカで見かけたタンザニア産のペリステライトの原石ロットです。写真を一見すると、ただの原石ロット、何ということはありませんが、右の写真をご覧頂くと、その驚きのサイズがお分かりになるかと思います(右の写真で手に持っているものは、左の写真中央部から少し右上の石と同じものです。ちなみに、この手はこのコラムを書いている私のものですが、成人男性ではかなり大きな方だと思います)。

ペリステライト原石(ロット) ペリステライト原石

もしこの原石がスリランカ産のブルームーンストーンなら、おそらく手に持った石一つで数千ドルは下らないでしょう。美しく、大きな石がたくさん入ったロットでしたので、値段は安くはありませんでしたが、"ブルームーンストーン"と比べるとやはり破格の安さでした。

日本だけでなく、スリランカ国内で他国産の石がブルームーンストーンとして出回っている背景には、スリランカ国内のブルームーンストーンの産出が減っていることが挙げられるかもしれません。現に、以前はスリランカで時々見かけた、大きな良質ブルームーンストーンのルースを見かける機会がめっぽう少なくなりました。

スリランカの宝石を代表するような石の一つが、他国産のものにとって変わられて日本や現地で流通しているのを見るのは、長年スリランカで仕事をしてきた私達にとっては、なんだか複雑な気分です。

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