8. ルーペのあれこれ(前編:サイズ・倍率について)

ルーペには、虫眼鏡のような形のものやゴーグルのようなヘッドルーペなどさまざまな種類がありますが、宝石用に良く使われているのが、宝石用の特殊なルーペです。

宝石用のルーペを選ぶ際には、通常のルーペとは異なるいくつかのポイントがありますので、「前編:サイズ・倍率について」、「後編:レンズの種類」(後日記載予定です)の二つに分けて簡単にご紹介いたします。

まずは、ルーペのサイズと倍率に関するお話です。


1. サイズの違いについて

こちらの写真は、宝石鑑別用としても世界的に非常に良く使われている、Bausch&Lomb(ボシュロム)社のそれぞれの倍率のルーペの大きさの比較写真です。
倍率が大きくなるにつれ、レンズのサイズ、全体の大きさが小さくなっているのがお分かりになるかと思います。

ルーペ選びのポイント①
通常、宝石を高倍率で観察する際には双眼実体顕微鏡を使いますが、20倍の倍率で観察出来る道具を手軽に持ち運びできるという点で、20倍ルーペは便利です。
ただし、宝石用ルーペを使う場合、人差し指をルーペに通して持つことが多いですが、20倍ルーペは小さいので、指を通す事が出来ません(14倍のルーペは、指が細い方は通すことが出来るくらいのサイズです)。高倍率のものの取り扱いには、慣れが必要になるでしょう。


ルーペの持ち方に関するお話を申し上げたので、基本的なルーペの使い方を簡単にご案内いたします。

ルーペの使い方
ルーペの持ち方
一般的には、利き手の人差し指をルーペに通して保持します。
指を通せないような形状のルーペや、小さくて指が入らないようなもの、逆に指を通すと隙間が大きすぎるようなものは、親指と人差し指でつまむように持ったりします。

ルーペの使い方
利き目の前に、ルーペを持った手を顔(頬骨や鼻など)に付け、脇を締めてしっかり固定します。
宝石にルーペを近づけて、遠くからルーペを覗き見るようなことはしません。
逆の手でピンセットを持ちますが、この時ルーペを持っている手の指の間を通したり、ルーペを持っている手に付けて支えると、ピンセットがぶれません。
ルーペを見ていない方の目は開けたままにしておきます(閉じると目が疲れます)。
机の上などで見る場合には、間隔を大きくあけて両肘をつき、大きな三角形を作るようにすると安定します。

2.倍率による視野の違いについて

こちらの写真は、千円札の野口英世の肖像画の目の部分を、それぞれの倍率のルーペで観察を行ったものです(カメラの倍率は固定し、カメラのレンズとルーペの距離は2cm程あけています)。
20倍ルーペは、かなり細部まで観察できますが、目の両端が切れるほどの視野しかありません。目の大きさは3mm以下ですので、大きなルースを観察するには少し厳しいところがあります。

ルーペ選びのポイント②
どの位のサイズの石を見る事が多いのか、という点も大事です。大きな石を20倍ルーペでくまなく見るのは大変ですが、メレサイズの石のインクルージョンを10倍ルーペで細かく観察することもまた困難です。


宝石の判別やインクルージョンの正確な観察には、高倍率で見た方が良い場合がありますが、初めてルーペをお選びになる際には、10倍のものを強くお勧めいたします(10倍のルーペが、色石やダイヤモンドの評価の際の世界的な基準です)。

上記のポイントに加え、高倍率になるほど焦点距離が短くなり、対象物をルーペに近づけなければいけません。ピントが合う位置が厳密になり、また対象物に近いために光が遮られ、暗くなったりもします。
10倍ルーペを完璧に使いこなした上で、細かいインクルージョンなどを判別する必要性が出てきたときに、14倍や20倍のルーペの追加を考えると良いでしょう。


後編では、レンズの種類についてのお話をしたいと思います。宝石用ルーペには、こちらも非常に大事な要素ですので、ぜひご覧下さい。

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