3. 宝石中のインクルージョンによる産地の推定

天然の宝石には、ほぼ必ずと言って良いほど、内包物(インクルージョン)が含まれています。
宝飾用としての宝石においては、肉眼ではっきりと見えるようなインクルージョンは美しさを損なうとして、あまり好まれないという面はありますが、その存在により、天然の宝石であることの証明になったり、加熱などの処理がなされているかどうかを判断したりする、重要なポイントになります。
また、インクルージョンは、母体となる宝石の生成過程で一緒に作られたり、取り込まれたりするものですので、その過程が異なると、成分や形が異なってきます。このため、インクルージョンを観察することにより、ある程度、その産地を推測することが出来る場合があります。

今回は、弊社で取り扱いのある、スリランカ産のサファイアと、マダガスカル産のサファイアの代表的なインクルージョンの一例をご紹介したいと思います。

上記の2枚の写真は、スリランカ産のサファイアに見られる特徴的なインクルージョンです。サファイア中にこれらのインクルージョンが観察された場合には、それがスリランカ産のものであると推定することが出来ます。

左の、多数の白く長く伸びたインクルージョンは、絹糸のような外観から、シルクインクルージョンと呼ばれています。ごく細い針状のルチルインクルージョンが、三方向から120度(60度)で交差しているのが特徴です。ミャンマー産のサファイアにも、このシルクインクルージョンが観察されることがありますが、一般的にはスリランカ産のものより、太くて短いことが多いので、大抵の場合は区別することが出来ます。
右のインクルージョンは、フィンガープリント(指紋状)インクルージョンと呼ばれています。液体インクルージョンが、細い管状に平行に密集して並んでおり、その名の通り指紋のような外観をしているのが特徴です。この指紋のようなインクルージョンは、スリランカ産サファイアを代表するインクルージョンです。

左は、マダガスカル産サファイアに特徴的なルチルインクルージョンの写真です。
先に挙げた、スリランカ産のサファイアに含まれるインクルージョンと比較すると、非常に太いのが特徴です(ガードルのラインと比較して頂ければ、おおよその大きさが分かるかと思います)。スリランカ産のものには、ほとんどこのようなインクルージョンは見られません。

このように、宝石に含まれるインクルージョンは、その産地を知る上で、非常に重要な役割を果たすことがあるのです。

※これらのインクルージョンは、それぞれの産地に特徴的なものですが、インクルージョンを目視しただけでは、完全に産地を断定することは出来ません。あくまで、「比較的確度の高い推定方法の一つ」です。

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