1. 天然ブルートパーズは存在しない?

トパーズは色の種類が非常に豊富で、代表的な黄色、黄金色を始めとし、赤やピンク、褐色、橙、そして青や紫など、多彩なものが産出されます。今回はその中のひとつ、青色を示すブルートパーズについてのお話(愚痴?)です。

天然のブルートパーズ(カット以外に人為的な加熱や処理が行われていない、ナチュラルのブルートパーズ)は、淡い上品なブルーが特長で、ごくごく僅かの量が自然界に存在しています。しかし、現在日本の宝石店には、非常に見事な色の、「天然ブルートパーズ」と称されたものが、驚くほど安い値段で大量に並んでいます。これはいったいどうしてでしょうか?

実は、その青い色は自然の色ではなく、ほとんどが無色のトパーズにX線等を照射したり、加熱して付けられた色なのです。一般に出回っているブルートパーズは、ほぼ全てといって良い程このトリートメント処理が行われ、色や処理方法が確立された地域により、「スカイブルー・トパーズ」や「スイスブルー・トパーズ」、「ロンドンブルー・トパーズ」等の様々な呼称が付けられて販売されています。加熱処理は、その後色の変化は起きませんが、X線等で処理された石は、太陽光に長時間晒すと急速に色が消失し、地色に戻ってしまいます。

ではなぜ、処理により色が付けられているのに、「天然」ブルートパーズなの?と思われる方も多いと思いますが、言うなれば「天然(の素材である無色の天然トパーズに人為的に処理を加えて出来た)」ブルートパーズということです。「合成」によって作られたトパーズではない、という意味では間違ってはいないのでしょうが、非常に誤解を招きやすい表現です。

最近、非加熱・非処理のブルートパーズがいかに少ないかということを物語る、皮肉な出来事が起きました。平成16年9月、日本ジュエリー協会発行の「宝石もしくは装飾用に供される物質の定義および命名法に関する規定」が改定されました。これは、鑑別書の表記やコメントを定義した、鑑別書のマニュアルのようなものです。その中でブルートパーズには一律、「色の変化を目的とした人為的な照射処理が行われています」との開示コメントが付せられることになった様です。これは、鑑別書上では非加熱・非処理のブルートパーズは存在しないということを意味します(正確に言うと、「これは非加熱・非処理のブルートパーズです」と鑑別により断定することが出来なくなったという事です)。悪貨が良貨を駆逐したというのは言い過ぎかもしれませんが、鑑別業界ではナチュラル・ナチュラルのブルートパーズは存在しないとされる程までに、「本物の」ブルートパーズは珍しくなってしまいました。

とはいうものの、産地では(原石約60kgの袋の中にわずか数個程度の、極めて低い確率ではありますが・・・)、最初から淡いブルーの入った、ナチュラルブルートパーズが確かに存在します。弊社では、その貴重なる原石を発見の都度大切にストックし、カットして輸入しています。自社の鉱山で取れたものや、現地で直接仕入れている、出所が確実なものばかりなのですが、非加熱・非処理の天然ブルートパーズと公に認められないのは非常に残念なことです。

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